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「法的債権回収の基礎」①金銭債権の差押え一般

2015年4月21日
東京弁護士会「中小企業法律支援ゼネラリスト養成講座」
「法的債権回収の基礎」 ①金銭債権の差押え一般
弁護士  黒 嵜  隆
 

1. 訴訟と執行の違い

 判決手続に代表される訴訟と強制執行とはどう違うのか
 「それを一言で言えば、訴訟は、争っている当事者間の間でどっちに権利があると判断されるかという「概念」の世界であるのに対して、強制執行は、もっている財産とか利益があちらからこちらに動くという、社会生活の中の「現実」の世界なのです。」(「民事執行・保全入門」(補訂版)中野貞一郎著 有斐閣 から引用)
 
 「金銭を請求できる権利があると分かっていても、それでもって金が入るというわけではない」「請求できる権利をもっていても、相手がその義務を履行しようとしない場合に、自分で実力を行使することは許されない(自力救済の禁止)。」「公の権力によらなければ自分の権利を実現することはできません。」「債権者としては、自分のもっている請求権の実現のためにどのような執行方法を選ぶかを、法定のカタログから自分で決めなければなりません。」(同著から引用)
 
 弁護士として、中小企業の経営者から金銭債権の回収の相談を受けた場合(大企業でも同様ですが)、常に現実の回収のための強制執行手続を踏まえた法的手続の選択を迫られることになります。
 もちろん、相談の段階で強制執行の対象となる財産の有無が必ずしも明らかではない場合もあるでしょう。しかし、可能な限り事前の調査を怠ってはいけないと考えます。そして、前提の知識としてどのような財産に対してどのような執行手続ができるのかを押さえておくことが必要となります。
 
 また、金銭債権の回収のために執行手続を行うために訴訟を提起して判決等の債務名義を取得するために相当の期間が必要となることも多く、その期間内に債務者の財産が散逸する可能性があります。その財産の散逸を防ぐために民事保全を検討しなければなりません。
 その際には、保全命令発令の可能性(被保全債権の疎明資料が備わっているか、保全の必要性があるか等)、保全保証金拠出が可能かどうか、本訴で敗訴した場合に損害賠償を請求されるリスクなどを検討しなければなりません。
 
 以下、民事執行手続を概観します。
 ★なお、民事執行法は強制執行を、執行によって満足を与えられるべき請求の種類によって、①金銭執行(金銭の支払を目的とする債権についての強制執行)と②非金銭債権の執行(金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行)とに区別しています。
 

2. 金銭債権の執行

 金銭債権の執行手続とは,商品を販売したが代金が支払われない、お金を貸したが返済時期が来ても返済されない場合にその債権者の申立てによって,裁判所が買主や借主などの債務者の財産を差し押えてお金に換え(換価),債権者に分配する(配当)などして,債権者に債権の満足を図る手続です。

 

 民事執行手続には,執行の対象に対して担保権を設定している場合(法定担保の場合もあります。)の担保権の実行手続と、担保権を設定していない債務者の一般財産を対象とする強制執行手続があります。)。
 
民事執行手続
  強制執行
     金銭執行
           不動産執行  強制競売
                     強制管理
           準不動産執行 船舶、自動車等の強制競売
           動産執行
           債権執行
     非金銭執行
           物の引渡請求権の執行
           作為、不作為請求権の執行(代価執行)
           意思表示の擬制
  担保権の実行
  担保不動産の競売
     担保不動産収益執行
     準不動産競売・動産競売・債権その他の財産権に対する担保権の実行
  形式競売
     留置権による競売
  財産開示
 

3. 強制執行手続

(1) 執行力のある債務名義

 強制執行を行うためには債務名義が必要となります。債務名義とは,強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことです。なお、債務名義には、受訴裁判所が執行を進めていいというお墨つきを与える執行文が必要となります。

 

確定判決
 「1000万円を支払え。」などと命じている判決で,上級の裁判所によって取り消される余地のなくなった判決。
仮執行宣言付判決
 仮執行の宣言(「この判決は仮に執行することができる。」という判決主文が付された給付判決は,確定しなくても執行することができます。
和解調書,調停調書
公正証書
 公証人が作成した「執行認諾約款」付公正証書によって判決等を得ることなく執行できる。 

 

(2)  差押 

 目的物を執行機関(執行裁判所、執行官)によって換価するためには、まず、債務者が目的物を 勝手に処分できないように、執行機関が目的財産を確保しておく必要があります。そのために強制執行の第一段階として行われるのが「差押」です。
 「差押」によって、債務者は目的物の処分を禁止され、執行機関が処分権を取得します。不動産の場合は差押登記、動産の場合は執行官の管理、債権の場合は差押命令の送達など、目的物によって差押の具体的な方法は異なります。

 

(3) 換価 

 差押によって処分権を取得した執行機関が目的物を換価します。典型的な方法は、競売等による売却ですが、これも執行の種類によって異なります。

 

(4) 満足 

 目的物の売却等で得た金銭を債権者に交付して執行は終了します。債権者が一人の場合には他の債権者との関係を考慮する必要がないため、債権が満足されるまで債権者に交付することになります(弁済金の交付)。
 一方、複数債権者がいる場合は、各債権者に公平に満足を得させるため、債権者の満足は主に執行機関が行う「配当」によります。債権差押の場合は主に取り立てによって満足を得ることになります。
 

4. 不動産の強制競売

(1) 申立て

 不動産執行は、目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てることになります。
 同一の債権で、複数の不動産が同一の管轄である場合には、1通の申立書で複数の不動産の執行を申し立てることができます。 

 

(2) 開始決定、差押え 

 申立てが適法になされた場合には、裁判所は,不動産執行を始める旨及び目的不動産を差し押さえる旨を宣言する開始決定を行います。
 開始決定がされると,裁判所書記官が,管轄法務局に対して目的不動産の登記簿に「差押」の登記をするように嘱託をします。また,債務者及び所有者に開始決定正本を送達します。

 

(3) 売却

 裁判所は,執行官や評価人に調査を命じ,目的不動産について詳細な調査を行います。
 土地の現況地目,建物の種類・構造など,不動産の現在の状況のほか,不動産を占有している者やその者が占有する権原を有しているかどうかなどが記載され,不動産の写真などが添付された現況調査報告書,競売物件の周辺の環境や評価額が記載され,不動産の図面などが添付された評価書,そのまま引き継がなければならない賃借権などの権利があるかどうか,土地又は建物だけを買い受けた時に建物のために底地を使用する権利が成立するかどうかなどが記載された物件明細書のいわゆる三点セットを作成します。

 

 さらに,裁判所は,評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めます。ただし、この基準価額をもとに、売却がなされた場合に申立債権者にまったく配当される見込がない(=「無剰余」の場合) 場合、裁判所はその旨を申立債権者に通知し通知後1 週間の経過によって、競売手続は取り消されることになります。 これは、国家権力による強制力を伴う執行について、なんら利益を得ない債権者の執行を排除するためです。

 

(4) 入札

 その後、定められた期間内に入札をする期間入札が行わることになります。入札手続が開始されると、入札は,売却基準価額から,その10分の2に相当する額を差し引いた価額(買受可能価額)以上の金額でしなければなりません。

 最高価で落札し,売却許可がされた買受人は,裁判所が通知する期限までに,入札金額から保証金額を引いた代金を納付しなければなりません。

 

(5) 配当

 裁判所は,差押債権者や配当の要求をした他の債権者に対し,法律上優先する債権の順番に従って売却代金を配当します。抵当権が設定されている債権と,債務名義しか有していない債権とでは,前者が優先します。また,抵当権を有している債権の間では,抵当権が設定された日の順に優先し,債務名義しか有していない債権の間では,優先関係はなく,債権額に応じて平等に扱われます。

 

 差押えをした債権者でなくても、配当請求を行うこともできます。ただし、これは①執行正本を有する債権者②差押登記後に登記された仮差押債権者③一般の先取特権を有することを証する文書により証明した債権者に限られます。
 既に他の債権者によって強制競売もしくは担保不動産競売の申立がなされ開始決定がされているとしても、 二重、三重に競売を申し立てることができますが、先行する競売の配当に参加できるのであれば、特別な事情がなければ実益は少ないといえます。
 

5. 動産執行

 債務者所有の動産を換価して、債務の弁済に充てる手続です。不動産の競売と異なり、執行官に申し立てることになります。
差押の方法は、執行官が債務者所有の動産の占有を取り上げて、執行官にその占有を移すことにより行われます。 ただし、執行官が相当と認める場合は、差押物をそのまま債務者に保管させることもでき、この場合は、差押物に封印その他の方法で差押の表示をしたときに、差押の効力が生じます。また、倉庫業者等の第三者に、保管させることもできます。
 

6. 債権執行

(1) 申立て

 債権者は、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に債権執行の申立てを行います。債務者の住所地が不明であれば,例えば給料を差し押さえる場合は債務者の勤務先,銀行預金を差し押さえる場合はその銀行の所在地を管轄する地方裁判所となります。
差押の対象としては、銀行預金、売掛債権、給与債権、役員報酬債権などを検討することになります。

 

 銀行預金を差し押さえる場合には、通常、店舗割付方式「「○○銀行(○○支店扱い)」として取扱支店を特定した上で,先行差押えの有無,預金の種類などによって預金を順位付けし,さらに同種の預金が複数あれば口座番号の若い順,口座番号が同一であれば預金番号の若い順と順位付けし,その順に請求債権の金額に満つるまでを差し押さえる方式」で行っていました。
 しかし、債務者がどこの金融機関の,どこの店舗に預金をしているかは容易に調査することはできません(財産開示手続を行ったとしても)。

 

 そこで、全店一括順位付け方式「金融機関の全店舗を対象として支店番号の若い順などと順位付けをして,先順位の店舗の預貯金債権の額が差押債権額に満たないときは,順次予備的に後順位の店舗の預貯金債権を被差押債権とする旨の差押えを求める方式」、 預金額最大店舗方式「具体的な支店を特定することなく,複数の店舗に預金債権があるときは,預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象として請求債権額に満つるまでの債権を差し押さえることを求める方式」の適法性が争われてきましたが、 最高裁はいずれも否定しています。

 

 債務者が有する売掛債権については、従前の取引関係などいざというときのための日頃の調査の有無で成果が大きく変わってくると思われます。
 

(2) 差押命令

 裁判所は,債権差押命令申立てに理由があると認めるときは,差押命令を発し,債務者と第三債務者に送達します。

 

 ただし、次の債権については、各支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する額は差押が禁止されます。①債務者が私人から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係わる債権(扶養請求権や生保会社との年金契約にもとづく継続的給付請求権、なお、公的年金等の差押は禁止されています。)② 給料、退職年金、賞与等給与の性質を有する債権 ③ 退職手当等給与の後払的性質を有する債権 

 もっとも、①、②については、月額44万円以上の支給である場合は、そのうち33万円が差押禁止となり、その額を越える部分について全てを差し押えることができます。

 

 また、差押禁止債権である年金等の給付が預貯金口座への振り込みによって、金融機関に対する金銭債権に変わった場合、一般的には、差押禁止債権であっても、預金債権となった場合にはその全額について差押えが可能となりますが、受給者の生活保持の見地からの差押禁止の趣旨は尊重されるべきであることから、債務者は、差押禁止債権の範囲変更の申立てをして、差押えが取り消されることがあります。

 

(3) 取立て

 債権差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過したときは,債権者はその債権を自ら取り立てることができます。第三債務者が任意に支払いをしない場合には取立訴訟を提起することになります。
第三債務者が供託をした場合は,裁判所が配当を行うので,直接取り立てることはできなくなります。
 

7 担保権の実行

(1) 担保権の設定、法定担保権の発生

 担保権の実行手続は,債権者が債務者の財産について抵当権などの担保権を有しているときに,これを実行して当該財産から満足を得る手続です。この場合,判決などの債務名義は不要であり,担保権が登記されている登記簿謄本などが提出されれば,裁判所は手続を開始することとなります。

 

 なお、当事者間の約定がなくても,民法や特別法上の要件を満たせば当然に担保としての効力を生ずる法定担保物件に留意する必要があります。留置権と先取特権がこれに当たりますが、動産売買先取特権はメーカーや商社の商品売買代金回収にとって有効な手段となることがあります。 また、区分所有法によってマンション等の管理費について先取特権が認められています。

 

(2) 担保不動産の競売、収益執行

 担保不動産に抵当権が設定されている場合には、被担保債権が支払われない場合に競売を申し立てること、物上代位によって家賃を差し押さえることができます。  

 

(3) 債権執行  

 物上代位に基づく不動産賃料請求権の差押えが有効となる場合が多くあります。  

 

以上
 

 

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